庚申さん:八坂庚申堂(金剛寺)
祇園のお茶屋さん・石畳・八坂の塔。
この八坂の塔を
下から見上げる位置に立ちますと
その右手に
『小さな座布団の様なものの
四隅をくくり上げ縦に連ねた飾り』が
沢山下がるお堂が見えます。
こちらが
【八坂庚申堂】(やさかこうしんどう)
庚申(こうしん)さんと呼ばれる
金剛寺です。
境内にいっぱい下がる飾りは
「くくり猿」というもので
手足を上にくくり上げられ
吊るされている猿の姿
をかたどっているらしい。
庚申堂の「申」も「さる」と読みますし
猿の神様を祀っているのかなあ
くらいの認識で
お参りしたことは一度も無いのですが
今年2月13日が
『初庚申』という
今年最初の縁日らしいので
一度下見も兼ねて
お参りしてみることにしました。
(縁日当日は
落ち着いて見ることは
できなさそうなので)
手前の小さなお堂の真ん中には
おびんずるさまがいらっしゃいまして
本来なら なでられまくる仏様ですが
大量のくくり猿にガードされて
近寄りがたい状態に。
このお堂に下がるくくり猿は新しく
色も赤・ピンク・青・白・黄・紫
と とてもカラフル。
左手にある寺務所で購入し
願い事を書いて下げるものらしいです。
絵馬のようなものですね。
奥の本堂のくくり猿は
布の色柄も大きさも様々
お参りする人の手作りっぽく
なかなか年季が入っている感じです。
『見ざる言わざる聞かざる』の
三猿モティーフがあちこちに。
お堂に下がるくくり猿の下にも
その前の香炉の足にも お猿さん。
これだけ「猿」がぶら下がっているお寺ですが
本尊として祀られているのは
「猿」の神様ではなく 青面金剛(しょうめんこんごう)さま。
もともと 中国から伝わった伝説で
人間の体の中には「三尸(さんし)」という虫が住んでおり
これが 庚申(かのとさる)の日になると
眠っている人間の体から抜け出して
天帝さまに その人間の日頃の行いを報告する
とされているのですが
この時
日頃の行いが悪く、この虫さんに
「こいつは こんな悪いことをやらかしましたよ」
と告げ口されようものなら
寿命を縮められてしまうらしいのです。
しかし この虫さんは
人間が眠らないと身体から抜け出せないので
「この日徹夜すれば、告げ口されないじゃないか」
ということを思いつく人間が出現
庚申待ち なる「徹夜の会」が行われるようになりました。
そして 青面金剛さまは
「人間の体内から出てきた三尸を食べる」
と いわれているため 庚申=青面金剛として
より信仰される事となった、と。
庚申の日は 年に6回あるそうですが
徹夜なぞほとんどしたことのない私、
今まで どれだけ告げ口されたことやら。
この「くくり猿」
手足を縛りあげられた上、吊るされる という あわれな姿を見ると
ご利益というより
むしろ祟られないのだろうかと心配になりますが
この猿は「人の欲望」を表しているものだそうでして
人間の欲望を押えこむ形代(かたしろ)と思えばよいのですね。
願い事がある人は
この「くくり猿」を購入して願い事を書き、お堂に吊るすのですが
この時 一つだけ「我慢する、欲望を抑える」事を決めるのだそうです。
つまり
「これだけは我慢するので、願いをかなえてください」
という方式で 祈願するものらしい。